子育て

【この論争には、今日、ここで結論を出そうシリーズ】第二回は、ゲーム論争。

はじめに

「この論争には、今日、ここで結論を出そうシリーズ」第二回だ。

昨日のスマホ論争に続き、今日は多くの家庭で頭を悩ませている「ゲーム論争」について、

僕なりの明確な結論を伝えたい。

「ゲームは1日1時間まで」

「宿題が終わったらゲームOK」

「週末だけならいいでしょう」

こうしたルールを設けている家庭は多いと思う。

しかし、率直に伝えたい。

これらのルールは、ほぼ確実に機能していない。

そして僕が長年の教育経験から導き出した結論は、これだ。

「平日のゲームは、一切必要ない。むしろ、平日のゲームは、確実に子どもの未来を削っている。」

今日は、なぜそう断言できるのか、詳しく話してみたい。

「1時間だけ」が守られない科学的理由

ゲームの設計思想を知っているだろうか?

まず、保護者の皆様に理解してほしい事実がある。

現代のゲームは、「やめられない」ように設計されている。

この事実を知ってほしい。

ゲーム会社は、心理学者、脳科学者、行動経済学者などの専門家を集め、

「いかにプレイヤーを夢中にさせるか」を研究している。

彼らの目的は、明確だ。

できるだけ長く、できるだけ頻繁にゲームをプレイしてもらうこと。これだ。

具体的には:

報酬の不確実性→ガチャやドロップアイテムなど、「次こそは!」と思わせる仕組み。

進行の視覚化→レベルアップ、経験値バーなど、「もう少しで達成できる」感覚。

損失回避の利用→ログインボーナス、期間限定イベントなど、「やらないと損する」心理。

社会的圧力→フレンドシステム、協力プレイなど、「仲間に迷惑をかけられない」義務感。

これらの仕組みは、大人でさえ抗うのが難しいレベルで洗練されている。

自己管理能力が未熟な小中学生が、「1時間で止める」と決めても、

その決意が、脳科学的な仕組みに勝てるはずがないんだ。

「あと5分」が30分になるメカニズム

こんな光景はないだろうか?

あなた「もう1時間経ったよ。やめなさい」
子ども「あと5分!今、いいところだから!」
あなた「じゃあ、5分だけよ」

そして5分後。

あなた「もう5分経ったでしょ!」
子ども「あと少し!本当にあと少し!」

この「あと少し!」は、決して終わらない。

なぜなら、ゲームには「いいところ」が永遠に続くように設計されているからだ。

ボスを倒したら次のダンジョン

レベルが上がったら新しいスキル

ミッションをクリアしたら次のミッション

そう。終わりがないんだ。

結局、親が強制的に止めるか、子どもが疲れ果てて、寝落ちするまで続くことになる。

ゲームが学力に与える3つの致命的な影響

長年多くの生徒を見てきた経験から、はっきりと言えることがある。

平日にゲームをしている子どもと、していない子どもでは、学力の伸びが明らかに違うということだ。

1. 集中力の根本的な破壊

ゲームは、脳に強烈な刺激を与え続ける。

派手なエフェクト、爽快な効果音、次々と変わる展開。

脳は常に興奮状態に置かれる。

この状態に慣れた脳は、静かな刺激に耐えられなくなるんだ。

数学の問題を30分考える。英語の長文を丁寧に読む。社会の教科書を1時間読み込む。

こうした「地味で静かな学習」が、耐え難く退屈に感じられるようになってしまう。

実際、「ゲームをやめたら、勉強に集中できるようになった」という声を何度も聞いてきた。

ゲームをしている間は、その子の本来の集中力が眠ったままなんだ。

2. 時間の圧迫

「1日1時間だけ」と決めていても、実際にはどうだろうか。

ゲームをするための準備時間が、5分。

実際のプレイ時間が、1時間30分(往々にして守られない)。

ゲームのことを考えている時間が、学校でも、食事中でも、常に。

そう。僕も身に覚えがある。

「物理的にゲームをしている時間」だけが問題なのではない。

「ゲームのことを考えている時間」が、子どもの思考を支配してしまうんだ。

授業中も、「帰ったらゲームしよう」と考える。

宿題をしながらも、「早く終わらせてゲームしたい」と焦る。

寝る直前まで、「明日はあのミッションをクリアしよう」と考える。

子どもの貴重な思考リソースが、ゲームに奪われていることがわかるだろう。

3. 読書習慣の完全な喪失

これが最も深刻かもしれない。

ゲームを長時間している子どもは、ほぼ例外なく、本を読まない。

当然だ。

ゲームという圧倒的に刺激的な娯楽があるのに、わざわざ地味な読書をする理由がないからだ。

しかし、読書は語彙力、読解力、思考力、想像力、すべての学力の土台だ。

小中学生の時期に読書習慣を失うことは、学力の土台そのものを失うことを意味する。

当塾で県立上位校に進学する生徒たちに共通するのは、「圧倒的な読書量」だ。

彼らは小学生の頃から、月に何冊、何十冊と本を読んできた。

一方で、ゲームに夢中な子どもたちは、年間の読書量が数冊、あるいはゼロということも珍しくない。

この差が、数年後に決定的な学力差となって現れてしまう。

「ストレス発散に必要」という誤解

よく聞く意見がある。

「子どももストレスが溜まっている。ゲームで発散させないとかわいそう。」

この考え方、実は大きな間違いだ。

ゲームは「ストレス発散」ではなく「ストレス先送り」

ゲームをすることで、確かに一時的には気分が良くなるだろう。

しかし、それは本当の意味でのストレス解消ではない。

なぜなら、ゲームをしている間、以下のことが起きているからなんだ。

宿題や勉強が進まない → 翌日さらにストレスが増える。

睡眠時間が削られる → 疲労とストレスが蓄積する。

親との衝突が増える → 家庭内のストレスが増える。

成績が下がる → 学校でのストレスが増える。

つまり、ゲームは目の前のストレスを先送りにして、より大きなストレスを後で生み出しているんだ。

本当のストレス発散とは

子どものストレスを本当に解消するのは、以下のような活動だ。

◎運動→体を動かすことで、脳内物質が分泌され、本質的なリフレッシュになる。

◎睡眠→十分な睡眠こそ、最大のストレス解消法だ。

◎家族との会話→話を聞いてもらうことで、心理的な安心感が得られる。

◎好きなことに没頭→絵を描く、楽器を弾く、工作をするなど、創造的な活動。

これらは、ゲームと違って「やればやるほど良い」活動だ。副作用がない。

ゲームでストレスを発散させるのではなく、これらの健全な方法を教えることこそが、親の役割だ。。

「友達との話題についていけない」という不安への答え

もう一つ、よく聞く心配がある。

「クラスの友達がみんなゲームの話をしている。うちの子だけゲームをさせないと、話題についていけなくて孤立するのでは?」

こういうものだ。

この不安は、親として当然の感情だと思う。

しかし、冷静に考えてみてほしい。

「ゲームの話題」は本当に必要か

まず確認したいのだが、友情はゲームの話題で成り立つものなのだろうか?

本当の友達なら、ゲームの話ができなくても、他の話題で十分につながれるはずだ。

スポーツ、学校の出来事、好きな本、面白かったテレビ番組など、話題はいくらでもあるのではないだろうか。

逆に、「ゲームの話ができないから友達になれない」というのなら、それは本当の意味での友情とは言えないだろう。

数年後には誰も覚えていない

さらに言えば、小学生、中学生の時期にどんなゲームが流行っていたか、高校生になれば誰も覚えていないものだ。

つまり、「友達との話題」のために子どもの学力や集中力を犠牲にする価値は、まったくないと言える。

目先の「仲間外れになるかも」という不安のために、長期的な子どもの利益を犠牲にする。

これは合理的な判断だろうか?

実際には孤立しない

そして、現実的な話をすれば、ゲームをしていない子どもが孤立するということは、ほとんどない。

当塾の生徒たちの中にも、ゲームをしていない子どもは大勢いる。

しかし、彼らは友達がいないわけではない。

むしろ、ゲームに時間を取られていない分、部活動や習い事、読書などで充実した時間を過ごしており、

本質的な人間関係を築いている子が多い。

結論は、平日ゲームゼロが最適解。

ここまでの議論を踏まえて、僕の結論を明確に述べよう。

平日のゲームは、一切必要ない。子どもの未来を削らないようにしよう。

推奨する方針は、「平日ゲームゼロ、週末は家族と相談」

具体的に、以下のルールを推奨したい・

【月曜日〜金曜日】

ゲームは一切禁止

例外は作らない(「今日は頑張ったから」も認めない)

これは家族のルールとして確立する

【土曜日・日曜日】

1日2時間まで。

ただし、学校の宿題と金曜日までの復習が完全に終わっていることが条件。

親が時間を管理し、時間が来たら必ず止める。

なぜ「平日ゼロ」が最適なのか

「1時間ならいいのでは?」と思う方もいるだろう。しかし、それでは不十分だ。

理由は、3つある。

1.中途半端が最も危険

少しでもゲームをすると、「もっとやりたい」という欲求が強まってしまう。完全にやらない方が、精神的には楽なんだ。

2.思考の支配から解放される

平日にゲームをしないと決めることで、「今日はゲームできるかな」「早く帰ってゲームしたい」という思考から解放される。

3.習慣化の力

平日はゲームをしない、という習慣が確立すれば、それが当たり前になる。

子ども自身も、それを前提に生活リズムを作れるようになっていく。

「かわいそう」という感情との向き合い方

ここまで読んで、「でも、子どもがかわいそう」と感じる方もいるかもしれない。

その気持ち、よく分かる。

友達が楽しそうにゲームの話をしているのを、羨ましそうに聞いている我が子を見るのは、

親として辛いものだ。

しかし、もう一度、冷静に考えてみてほしい。

本当に「かわいそう」なのは何か、ということを。

小中学生の数年間、ゲームができないことだろうか。

それとも、ゲームに時間を奪われて、本来の能力を発揮できず、将来の選択肢を狭めることだろうか。

答えは明らかだ。

目先の「かわいそう」という感情に流されて、長期的な子どもの利益を損なう。

これこそが、本当の意味で「かわいそう」なことではないだろうか。

平日ゲームゼロをどう実現するのか?

それでは、実際に「平日ゲームゼロ」を実現するには、どうすればよいのだろうか。

1. 家族間で完全に意思統一する

これは絶対条件だ。お父さんとお母さんのどちらかが甘ければ、子どもはそこを突いてくる。

「お母さんがダメって言ってるけど、お父さんなら許してくれるかも」と思わせてはいけない(このパターンが、実は多い)。

しっかり話し合い、この方針に100%同意しておこう。

2. 理由を丁寧に説明する

ただ「ダメ」と言うだけでは、子どもは納得しない。

なぜ平日はゲームをさせないのか、それがどう子どものためになるのか、愛情を込めて説明してほしい。

「あなたの集中力を守りたい」

「あなたには素晴らしい才能がある。それをゲームに奪われてほしくない。」
「週末はルールを守って楽しめばいい。でも平日は、未来のあなたのために頑張ろう。」

こうした言葉は、子どもの心に必ず届く。

3. 代替活動を用意する

ゲームを取り上げるだけでは不十分だ。

その時間で何をするかを、一緒に考えてあげてほしい。

図書館で本を借りる。

スポーツや習い事を始める。

家族でボードゲームをする。

一緒に料理をする。

プラモデルや工作など、手を使う趣味に没頭する。

子どもが「ゲーム以外にも楽しいことがある」と気づくきっかけを作ることが大切だ。

4. 週末はしっかり楽しませる

平日我慢させる分、週末はルールの範囲内でしっかり楽しませてあげてほしい。

「平日頑張ったから、週末は楽しもう」というメリハリが、子どもの自己管理能力を育てるからだ。

5. 最初の2週間が勝負

ルールを変更する最初の2週間が、最も大変だ。子どもは激しく反発するだろう。

しかし、ここで折れてはいけない。

2週間を乗り越えれば、子どもは新しい生活リズムに慣れていく。

そして数ヶ月後、親も子も「あの時頑張ってよかった」と思える日が必ず来るだろう。

「ゲームをしない子ども」が手に入れるもの

最後に、平日ゲームをしないことで、子どもが手に入れるものを伝えよう。

1. 本物の集中力

ゲームの刺激から離れることで、子どもの脳は本来の集中力を取り戻す。

静かに考える力、一つのことに没頭する力。

これらは、将来どんな仕事をする上でも、不可欠な能力だ。

2. 圧倒的な読書量

ゲームをしない時間は、読書に向かう。

小学生で年間100冊、200冊と読む子どもも珍しくない。

この読書量が、すべての学力の土台を作る。

当塾で県立上位校に進学した生徒たちの多くが、

「小学生の頃に読んだ本が、今の自分を作った」と振り返っている。

3. 時間の豊かさ

ゲームに支配されない生活は、時間的にも精神的にも豊かだ。

習い事を楽しむ余裕、家族と話す時間、ゆっくり考える時間。

子ども時代にしか持てない、貴重な時間を取り戻すことができる。

4. 自己管理能力

平日は我慢して週末に楽しむ、というメリハリのある生活は、自己管理能力を育てることができる。

この能力は、中学生、高校生、そして大人になってからも、人生のあらゆる場面で役立つだろう。

5. 本質的な友人関係

ゲームの話題で繋がる表面的な友情ではなく、本当の意味での友情を築く力が育つ。

共通の趣味、お互いの悩みを分かち合える関係。

こうした本質的な人間関係こそが、子どもの心を豊かにする。

終わりに。今日から始められる小さな一歩。

「平日ゲームゼロ」は、確かに簡単な決断ではない。

子どもの反発もあるだろう。

周囲から「厳しすぎる」と言われるかもしれない。

自分自身も、「本当にこれでいいのか」と迷うこともあるだろう。

しかし、数多くの子どもたちの成長を見守ってきた経験から、自信を持って言える。

この決断は、数年後、必ず正しかったと証明される。

「あの時、親が守ってくれた」

「あの時、ゲームをやめて本当によかった」

子どもたちが、必ずそう言ってくれる日が来る。

できることから始めてみませんか?

まずは、夫婦で話し合うこと。

そして、子どもと向き合って、この話をしてみること。

小さな一歩が、子どもの大きな未来につながっていく。

子どもの輝かしい未来のために、今、親として勇気ある決断をする時ではないだろうか。

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