子育て

【この論争には、今日、ここで結論を出そうシリーズ】第七回は「リビング学習論争」 。

「この論争には、今日、ここで結論を出そうシリーズ」第七回は、「リビング学習論争」だ。

「子どもはどこで勉強させるべきか?」

教育書やテレビでは、

「リビング学習が良い」

「親が見守る中で勉強させましょう」

「東大生の多くがリビング学習をしていた」

こういう話がよく出てくる。

しかし、これは専業主婦(主夫)家庭の話ではないだろうか。

現実には、地方都市でも共働き世帯がほとんどだと思う。

夕方から夜にかけて、親は仕事で不在。

子どもは一人で留守番、

あるいは学童保育。

「リビングで見守りながら勉強」なんて、物理的に不可能だろう。

僕が長年の経験から導き出した結論は、

「理想論ではなく、現実的な選択を。共働き家庭なら、塾の自習室を積極的に活用すべき」

これだ。

今日は、共働き家庭が直面する現実を踏まえた上で、どう対応すべきかを話したいと思う。

「東大生はリビング学習」は専業主婦家庭の話

まず、よく引用される「東大生の多くがリビング学習をしていた」というデータについて、現実的に考えてみたい。

これは「親が家にいる」前提の話

東大生の親の多くは、子どもが帰宅する時間に家にいたと考えられる

つまり、

子どもが学校から帰る → 親が家にいる

リビングで宿題を始める → 親がすぐそばにいる

分からないところがある → すぐ聞ける

親が「今日の宿題見せて」と確認できる

この環境があって、初めて「リビング学習」が成立する。

共働き家庭の現実

一方、共働き家庭の現実は、

子どもが学校から帰る(15時〜16時) → 親は仕事中

学童保育に行くか、家で一人で留守番

親が帰宅するのは18時〜19時

夕食の準備、入浴、翌日の準備に追われる

気づけば21時、「宿題やった?」と確認する時間もない

これが、多くの家庭の現実ではないだろうか?

「リビング学習が良い」と言われても、物理的に無理なんだ。

だから罪悪感を持つ必要はない

「うちは共働きだから、リビング学習できない・・・。」

「子どもの勉強を見てあげられない・・・。」

「良い親じゃないのかも・・・。」

こんな風に悩む必要は、まったくない。

共働きは、子どものためだ。

経済的な安定と親が働く姿を見せること。

これらも、立派な教育なんだ。

大切なのは、共働きという現実の中で、ベストな選択をすること

だと僕は思う。

結論は、共働き家庭は「第三の場所」を活用せよ

それでは、共働き家庭はどうすべきか。

リビングでも、自分の部屋でもなく、「第三の場所」である学童保育、塾の自習室、図書館を積極的に活用すべきだ。

具体的に、学年ごとに見ていこう。

【小学1〜3年生】学童保育+親の確認タイム

平日の過ごし方

放課後:学童保育で宿題を済ませる

帰宅後:親が帰宅していれば、「今日の宿題見せて」と確認

夕食後:余裕があれば、親と一緒に読書や復習

可能であれば、学童保育の職員の方に、「宿題を見てもらえますか」とお願いしたい。

多くの学童では、宿題の時間を設けているからだ。

親が帰宅後にすべきことは、

宿題ができているか確認

間違いがあれば、一緒に直す

「今日は何を勉強したの?」と聞く(これが、とても大切!)

 10分でいいから、一緒に音読や計算練習

完璧でなくていい。短時間でも、毎日続けることが大切なんだ。

【小学4〜6年生】学童+塾の自習室

高学年になると、学童を卒業する子も増える。そして、勉強内容も難しくなってくる。

最初の大きな壁は、小学5年生の算数だ。

この時期の選択肢

・◯文教室や◯研教室に通い始め、教室で宿題を済ませる

授業前後に自習室を使う

分からないところは、先生に質問できる

宿題が終わってから帰宅する

・一人で家で宿題(親が帰宅後、確認)

自立心がある子なら、これも可能。

ただし、親が帰宅後、必ず確認する時間を作る。

ポイント: 親がいない時間に、一人で勉強させるのは難しい。

ゲーム、YouTube、友達と遊ぶ。誘惑がたくさんあるからだ。

だからこそ、「勉強する場所」を家の外に作るのが現実的になってくる、と感じる。

【中学1〜2年生】塾の自習室が主戦場

親がいない時間に自分の部屋で一人で勉強。これは、ほぼ不可能だと言える。

なぜ自分の部屋での勉強が難しいのか

スマホの誘惑(LINE、YouTube、ゲーム)

部活で疲れている

「やらなきゃ」と思っても、一人では動けない

親が帰宅するのは夕方以降。

その時には、もう夕食・入浴の時間。

「勉強しなさい!」と言っても、時すでに遅しだ。

だからこそ、塾の自習室を活用する家庭が多い

【塾の自習室のメリット】 

学校帰りに直接塾へ行き、そこで勉強開始
周りも勉強している(サボれない)
スマホを使えない環境
分からないところは、先生に質問できる
宿題・勉強が終わってから帰宅

親が帰宅する頃には、子どもはすでに勉強を終えて帰宅している。これが理想だ。

【中学3年生〜高校生】塾の自習室+図書館

受験生になったら、さらに「第三の場所」の活用度を上げたい。

平日:

学校→塾の自習室(17時〜21時)

帰宅後、夕食・入浴・就寝

休日:

午前:図書館

午後:塾の自習室

夜:家で復習

ポイント:家は「休む場所」「リラックスする場所」と割り切ってしまうこと。

勉強は、塾や図書館で集中して行う。家では、軽い復習や暗記もの程度。

この割り切りが、共働き家庭の受験戦略だと思う。

共働き家庭が直面する3つの課題

ここで、共働き家庭が直面する具体的な課題と、その対策を整理してみたい。

課題1:「宿題を見てあげられない」

現実:子どもが宿題をやる時間(16時〜18時)に、親は仕事中。宿題ができているか、間違っていないかどうかを確認できない。

対策:

学童保育や塾で宿題を終わらせる仕組みを作る

親が帰宅後、10分でいいから確認する時間を作る

週末に1週間分をまとめて確認する

塾を活用する場合:当塾では、授業の前後に自習時間を設けている。その時間に学校の宿題を済ませ、分からないところは先生に質問することができる。

親が帰宅する頃には、宿題は終わっている。この状態を作ることができる。

課題2:「家で一人にすると、遊んでしまう」

現実:

親がいない時間、家で一人で勉強。これは、よほど自立心がある子でないと無理だ。

スマホ、ゲーム、YouTube。誘惑だらけ。

「今日は何時間勉強した?」と聞いても、「3時間!」と言うけれど、実際はスマホをいじっていた。

こんなことは日常茶飯事と言えるだろう。

対策:

個室で一人で勉強させることを諦める

塾の自習室や図書館など、「サボれない環境」で勉強させる

スマホは持たせない、または親が管理する

現実的には、中学生で、親がいない時間に一人で勉強できる子は、ほとんどいない。

だからこそ、塾の自習室という選択肢が重要になってくる。

課題3:「夜、帰宅してからバタバタして勉強時間が取れない」

現実:親が18時〜19時に帰宅。そこから:

夕食の準備

食事

片付け

入浴

翌日の準備

気づけば21時。「さあ、勉強しなさい」と言っても、もう遅い。子どもも疲れているからだ。

対策:

勉強は、親が帰宅する前に済ませておく

帰宅後は、家族の時間・休息の時間

親がすることは、「今日の勉強、見せて」と確認するだけ

ポイント: 共働き家庭では、夜は勉強の時間ではなく、家族の時間と割り切る方が現実的だ。

勉強は、放課後〜夕方の時間に、塾や図書館で済ませる。これが、成功パターンと言えるだろう。

共働き家庭からのよくある質問

Q1. 「学童保育でちゃんと宿題をやってくれるか不安」

  1. 学童保育の職員さんと、しっかりコミュニケーションを取ることが大切だ。

「宿題の時間を設けてもらえますか?」
「できれば、終わったか確認してもらえますか?」

こうお願いすれば、多くの学童は対応してくれるはずだ。

ただし、学童は「勉強を教える場所」ではない。あくまで「宿題をやる時間を確保する場所」だ。

間違いを直したり、理解を深めたりするのは、親の役割となる。

帰宅後、10分でいいので、確認する時間を作ろう。

Q2. 「塾の自習室って、本当に勉強するの? サボってないか心配」

  1. 塾による。だからこそ、塾選びが重要だ。

良い塾の自習室:

先生が巡回している

私語厳禁のルールがある

スマホ禁止

勉強の様子を親に報告してくれる

ダメな塾の自習室:

放置されている

おしゃべりし放題

スマホをいじっている子がいる

見学に行って、実際の自習室の雰囲気を確認することをお勧めする。

Q3. 「塾に毎日通わせるのは、経済的に厳しい」

  1. 毎日通う必要はない。

例えば:

週2回は塾の授業+自習室

週1回は図書館

残りは家で(親が見れる範囲で)

このように組み合わせれば、経済的な負担も減らせる。

また、自習室だけの利用を認めている塾もある。授業は週1回だけど、自習室は毎日使える。

こういうプランを検討してみるのも良いと思う。

共働き家庭の親ができること

「仕事で忙しくて、子どもの勉強を見てあげられない・・・。」

そんな罪悪感を持つ必要はない。共働きでも、親ができることはたくさんあるからだ。

1. 「勉強する場所」を確保する

これが最も重要。

家で一人で勉強させるのが難しいなら、塾の自習室や図書館という選択肢を与えること。

「今日は塾の自習室で勉強してきなさい」

 「図書館に行っておいで」

こう言えるだけで、子どもの勉強環境は大きく変わる。

2. 帰宅後の10分を大切にする

親が帰宅してから、夕食・入浴とバタバタする前に、10分だけ子どもの勉強を確認する時間を作ろう。

「今日は何を勉強したの?」

 「宿題見せて。できてるね」

 「ここ、間違ってるから直そうか」

たった10分でも、毎日続ければ、子どもは「親が見てくれている」と感じる。

3. 週末にまとめて確認する

平日は無理でも、週末なら時間が取れるはず。

もしそうなら、土曜日の午前中に、30分〜1時間、1週間分の勉強を一緒に振り返る時間を取りたい。

テストの結果を見る

ノートをチェックする

分からなかったところを一緒に解く

来週の目標を立てる

この時間が、子どもにとっては「親が自分の勉強に関心を持ってくれている」という実感につながる。

4. 塾の先生とコミュニケーションを取る

塾に任せっぱなしではなく、定期的に塾の先生と話をしよう。

「最近の様子はどうですか?」

「苦手なところはありますか?」

 「家でできることはありますか?」

先生と協力して、子どもを支える体制を作ることが大切だ。

5. 何より「働く姿」を見せる

そして忘れてはいけないのが、親が働く姿を見せることも、立派な教育だということだ。

「お父さんもお母さんも、毎日頑張って働いている」

 「だから自分も、勉強を頑張ろう」

子どもは、親の背中を見て育つ。

罪悪感を持つのではなく、「共働きだからこそ、効率的な方法を選んでいる」と、

自信を持ってほしい。

終わりに。共働き家庭の新しいスタンダード。

「リビング学習論争」

この論争は、専業主婦(主夫)家庭を前提にしたものだった。

しかし、現代の多くの家庭は共働きだ。

昭和の育児論を、令和の家庭に当てはめるのは無理があるだろう。

共働き家庭には、共働き家庭なりの、最適解があるはずだ。

それは、

家で一人で勉強させることを諦める

塾の自習室、図書館など「第三の場所」を積極的に活用する

親がいない時間に勉強を済ませ、親がいる時間は家族の時間にする

完璧を求めず、できる範囲でサポートする

これが、共働き家庭の新しいスタンダードだと僕は思っている。

罪悪感を持つ必要はない。

「見てあげられない」と悩む必要もない。

あなたは、子どものために働いている。 そして、現実的な方法で、子どもの勉強を支えている。

それで十分。いや、それこそが、令和時代の「良い親」の姿なのではないだろうか。

塾の自習室を活用する、図書館に通わせる、週末に一緒に勉強を振り返る。

こうした工夫で、子どもは十分に成長する。

当塾の生徒たちの多くが、共働き家庭だ。

そして、その生徒たちが、県立上位校に進学し、国公立大学に合格している。

環境が整えば、子どもは必ず伸びる。

そして、その環境は、必ずしも「親が家にいて、リビングで見守る」ことではない。

「勉強できる場所」を確保し、「応援している」というメッセージを送り続けること。

これが本質だと思う。

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