「この論争には、今日、ここで結論を出そうシリーズ」も第四回。
第四回は、「学校の宿題論争」だ。
今日は、多くの保護者の皆様が「当然やるべきもの」と信じている、
「学校の宿題」について、踏み込んだ話をしてみたい。
「宿題は絶対にやらせなければ」
「先生が出したものだから、全部やるべき」
「宿題をやらないなんて、非常識」
こうした考え方が一般的だ。
しかし、僕は、別の視点を持っている。
「やる意味のない宿題は、時間の無駄。場合によっては、やらせない方が子どものためになる。」
これだ。
これは、過激な意見に聞こえるかもしれない。
しかし、僕は教育の本質から、この結論を導き出しているんだ。
すべての宿題が「悪」ではない
誤解を避けるために、最初に明確にしておく。
僕は「宿題すべてが不要」と言っているのではない。
良い宿題と悪い宿題があると言っているだけだ。
誤解してほしくないが、僕は学校の先生方を批判したいわけではない。
多くの先生方は、本当に子どもたちのことを考えて、 日々努力されている。
ただ、一人の先生が30-40人の生徒を見ている中で、
一人ひとりに最適な宿題を出すことは、現実的に難しい。
だからこそ、家庭でも「うちの子には何が必要か」を 考える必要があると思うのだ。
「良い宿題」とは
以下のような宿題は、確実に子どもの成長に繋がる。
思考を深める宿題
算数・数学の応用問題
読書感想文(強制でなく、本を自由に選べる場合)
理科の観察記録
社会の調べ学習(ただし、テーマが適切な場合)
基礎を定着させる宿題
漢字の練習(適量であれば)
計算ドリル(復習として必要な範囲)
英単語の暗記
創造性を育てる宿題
自由研究
作文(ただし、テーマが適切な場合)
図画工作の制作
これらは、子どもの学力や創造性を伸ばす。こうした宿題は、当然やるべきだ。
「悪い宿題」とは
一方で、以下のような宿題は、時間の無駄で有害だ。:
機械的な反復作業
漢字を1文字50回書く
既に理解している計算問題を100問解く
教科書を丸写しする
意味もなくノートを埋めるだけの作業
量が過剰すぎる宿題
1日3時間かかるプリント類
すべての教科から大量に出される宿題
週末に出される「やりきれない量」の課題
目的が不明確な宿題
「やらせるため」だけの宿題
先生が「出さないと親から文句を言われるから」出す宿題
何の学習効果も検証されていない宿題
これらの宿題を、ただ「先生が出したから」という理由で全部やらせることは、
子どもの貴重な時間を奪っているだけだと思う。
「悪い宿題」が子どもに与える4つの害
それでは、意味のない宿題を無理にやらせることが、なぜ問題なのか。
1. 時間という最も貴重な資源を奪う
子どもの時間は有限だ。
漢字を1文字50回書く宿題に2時間かけるくらいなら、その時間で、
本を1冊読める
算数の応用問題を深く考えられる
家族と会話できる
創造的な遊びができる
どちらが子どもの成長に繋がるだろうか?
答えは明らかだ。
意味のない宿題は、有意義な活動から子どもを遠ざける。
2. 「学習=苦痛」という認識を植え付ける
機械的な反復作業、終わりの見えない大量の宿題。
これらを毎日続けていると、子どもはどう感じるだろうか?
「勉強って、つまらない。」
「学ぶって、苦しい。」
「早く終わらせて、自由になりたい。」
このような学習に対する嫌悪感が育ってしまう。
本来、学ぶことは楽しいはずだ。
新しいことを知る喜び
できなかったことができるようになる達成感
これらが、学習の本質だ。
しかし、意味のない宿題は、この本質を覆い隠してしまう。
3. 「考えない習慣」を作る
機械的な作業を毎日続けると、子どもは「考えない習慣」を身につけてしまう。
頭を使わず、ただ手を動かす。
意味を考えず、ただ終わらせる。
理解しようとせず、ただやり過ごす。
この習慣は、すべての学習に悪影響を与えてしまう。
宿題を「こなすだけ」の子どもは、考える力が育たない。
「なぜそうなるのか」を考えず、パターンを暗記しようとする傾向も強い。
本当に伸びる子どもは、少ない問題を深く考える習慣がある子どもなんだ。
4. 睡眠時間を削る
最も深刻なのは、これだ。
宿題の量が多すぎると、子どもは睡眠時間を削ってしまう。
小学生には9〜11時間、中学生には8〜10時間の睡眠が必要と言われる。
しかし、大量の宿題に追われる子どもは、この基準を満たすことができない。
睡眠不足は、
記憶の定着を妨げる
集中力を低下させる
情緒を不安定にする
成長ホルモンの分泌を阻害する
宿題のために睡眠を削ることは、学力向上どころか、学力低下を招くんだ。
結論は、宿題は「選別」すべきということだ。
ここまでの議論を踏まえて、僕の結論を明確に述べたい。
「学校の宿題は、すべて盲目的にやらせるのではなく、親が内容を確認し、必要なものだけやらせる。意味のないものは、やらせない勇気を持つべき。」
これだ。
具体的な判断基準
宿題を見たとき、以下の基準で判断してほしい。
【やるべき宿題】
✓ 子どもが理解していない範囲の復習
✓ 思考力を問う応用問題
✓ 創造性を育てる課題
✓ 適量の基礎練習(漢字・計算など)
【やらなくて良い宿題】
×すでに理解している内容の過剰な反復
×機械的な丸写し作業
×1文字を何十回も書くような無意味な反復
×時間に対して学習効果が著しく低いもの
【やり方を変えるべき宿題】
△ 量が多すぎる場合 → 半分だけやる、重要な部分だけやる
△ 簡単すぎる場合 → 飛ばして難しい問題だけやる
△ 作業が無意味な場合 → より効率的な方法に変える
「先生に怒られるのでは?」という不安
ここで多くの親御さんが心配することがある。
「宿題をやらせないと、先生に怒られるのでは?」
「成績に響くのでは?」
「学校で問題児扱いされるのでは?」
この不安、理解できる。
しかし、考えてみてほしい。
学校との良好な関係と、子どもの本当の成長と、 どちらを優先すべきだろうか?
もちろん、学校との関係を完全に無視するわけにはいかない。
だからこそ、以下の対応を推奨する。
学校との賢い向き合い方
宿題を選別する際、学校との関係をどう保つか。具体的な方法を伝えよう。
ステップ1:まず子どもの状況を把握する
宿題に取り組む子どもを観察してください:
何時間かかっているか
どんな表情でやっているか(楽しそう? 苦しそう?)
理解しながらやっているか、機械的にこなしているか
睡眠時間は十分か
この観察が、すべての判断の基礎になる。
ステップ2:優先順位をつける
宿題すべてをやる時間がない場合、優先順位をつけます:
【優先度:高】
理解が不十分な範囲の復習
思考力を問う問題
【優先度:中】
適度な基礎練習
創造的な課題(時間があれば)
【優先度:低】
既に理解している範囲の反復
機械的な作業
学習効果の低い課題
優先度の高いものから取り組み、時間切れになったら低いものは切り捨てるんだ。
ステップ3:連絡帳に正直に書く
宿題ができなかった場合、連絡帳に正直に書く。
【悪い例】
「体調が悪くて」(嘘をつく)
「忘れました」(無責任)
【良い例】
「昨日は他の宿題に時間がかかり、こちらまで手が回りませんでした。申し訳ございません」
「漢字の練習は、既に理解しているため5回ずつで切り上げ、代わりに算数の応用問題に時間をかけました」
正直に、しかし、丁寧に伝えることが重要だ。
ステップ4:必要なら直接相談する
宿題の量があまりにも多い、内容が不適切だと感じる場合は、担任の先生と直接相談しよう。
【相談の仕方】
×「宿題が多すぎます!」(攻撃的)
○ 「家庭で子どもの様子を見ていると、睡眠時間が不足しているようで心配です。宿題の量について、ご相談させていただけますか?」(協力的)
多くの先生は、保護者から丁寧に相談されれば、耳を傾けてくれる。
ステップ5:子どもに「考える力」を教える
そして最も重要なのは、子ども自身に判断力を育てることだ。
「この宿題、何のためにやるのか分かる?」
「これをやって、何か新しいことを学べた?」
「時間をかける価値があると思う?」
こうした問いかけを通じて、子ども自身が「学習の意味」を考えられるようになる。
正直に言うと、このステップは難易度が高いと思う。
だからこそ、焦らず、子どもの様子を見て、徐々にやってほしい。
こうした問いかけを通じて、子ども自身が「学習の意味」を考えられるようになる。
中学生、高校生になったら、子ども自身が宿題を選別できるようになるのが理想だと思う。
「でも成績が下がるのでは?」という心配への答え
ここで多くの方が心配することがあるだろう。
「宿題をやらないと、成績が下がるのでは?」
この心配に、明確に答えよう。
宿題をやることと、成績が上がることは別
まず理解してほしいのは、宿題を全部やることと、成績が上がることは、別問題だということだ。
当塾で、成績上位の生徒たちを見ると、興味深い事実がある。
彼らは、必ずしも学校の宿題を全部やってはいない。
代わりに、彼らがやっているのは、
本質的な理解に時間をかけている:なぜそうなるのか、深く考えている・
自分に必要な学習を選ぶ:弱点を把握し、そこを集中的に学んでいる。
読書に時間を使う:すべての学力の土台を作る。
十分な睡眠を取る:脳の機能を最大化する。
結果として、彼らの成績は安定して高いと言える。
本当に成績を上げるもの
成績を上げるのは、宿題を全部やることではない。
成績を上げるのは、
本質的な理解
深い思考
適切な睡眠
学ぶ意欲
成績を下げるのは、
機械的な作業に時間を費やすこと
睡眠不足
学習への嫌悪感
つまり、意味のない宿題を捨てることは、成績を上げる可能性さえあるんだ。
「提出物」としての宿題
ただし、中学校では「提出物」が内申点に影響してしまう。
この場合の対応は、
重要なものは必ず提出する
内申に直結するワークなどは優先的にやる
効率化する
既に分かっている問題は飛ばすか、最小限にする
答えを見ながらやる(丸写しではなく、理解しながら)
完璧主義を捨てる(80%の完成度でOK)
先生と相談する
「この部分は既に理解しているので、応用問題だけやらせていただけますか?」と相談。
柔軟に対応してもらえる場合もある。
僕が見てきた「宿題地獄」からの解放事例
最後に、実際の事例を話そう。
【事例1:小学5年生・Aさん】
状況:
毎日3時間の宿題
睡眠時間6時間
成績は中の下
常に疲れた表情
介入:
親御さんと相談し、宿題の選別を開始
機械的な作業(漢字50回書き、計算100問など)を削減
代わりに読書と早寝を推奨
3ヶ月後:
睡眠時間9時間に回復
表情が明るくなる
成績が中の上に上昇
本人「勉強が楽しくなった」
【事例2:中学2年生・B君】
状況:
部活と大量の宿題で、毎日深夜まで勉強
授業中居眠り
成績は下降中
介入:宿題の優先順位付けを指導
理解している範囲の宿題は大幅カット
睡眠を最優先に
半年後:
睡眠時間を確保
授業に集中できるように
成績が大幅に上昇
県立上位校に合格
共通点
これらの事例に共通するのは:
宿題を減らしたら、成績が上がった
という事実だ。
なぜか?理由は明確だ。
睡眠が確保され、脳の機能が回復したから。
本質的な学習に時間を使えるようになったから。
学習への嫌悪感が消え、意欲が湧いたから。
終わりに。「やらせる」から「考える」へ。
教育の本質は、「やらせる」ことではなく「考えさせる」ことだ。
宿題を盲目的に全部やらせることは、子どもに「言われたことをやる」習慣を植え付けるだけなんだ。
一方、宿題を選別することは、子どもに以下のことを教えることになる。
時間は有限であり、大切に使うべきこと。
すべてのタスクが等しく重要ではないということ。
自分で判断し、選択する力が必要だということ。
本質的なことに集中する重要性。
これらは、学校では教えてくれない。しかし、人生で最も大切なスキルだと思う。
「先生が出したから全部やる」という思考停止から、「これは本当に必要か?」と考える習慣へ。
この転換が、子どもを自立した人間に育てる。
もちろん、学校との関係は大切だ。
しかし、子どもの成長はもっと大切だ。
今日から、宿題に対する見方を変えてみませんか?
「この宿題、本当に子どもの成長に繋がっているのだろうか?」
この問いを持つことが、子どもの未来を変える第一歩になる。
やる意味のない宿題は、捨てる勇気を。
その勇気が、子どもの貴重な時間を守り、本当の学力を育てるんだ。
次回は、「褒める論争」について語ってみたい。
「褒めて育てる」が本当に正解なのか。
明日、この論争にも結論を出す。
お楽しみに。

