前回の話に加えて、もう一つ高校生や保護者に知っておいてほしいことがあります。
それは、「日本の就職のリアルな話」です。
今の日本の就職システムにおいて「就職活動のために学部を選ぶこと」自体が、実はほとんど意味を持たないという事実があります。
専門的な研究職や一部の技術職などを除けば、
日本の企業が募集する「総合職」の採用条件は、
ほぼ例外なく「全学部・全学科対象」です。
つまり、経済学部だから商社に入りやすいとか、文学部だから一般企業に就職しにくいといった、表面的な学部の違いが採用の決定打になることはないということです。
企業側が見ているのは「大学で何の専門知識を詰め込んできたか」ではなく、「どういう環境で、どう考え、どう動いてきた人間か」という根本的なポテンシャルだからです。
商社やメガバンクに経済学部や商学部の出身者が多いのは、「企業側が経済学部を有利に判定しているから(因果関係)」ではありません。単に「そもそも商社を受ける経済学部の学生の数(母数)が圧倒的に多いから」というだけです。
一方で、文学部や教育学部の学生は、最初から出版、マスコミ、教員、公務員などに志望が分散しがちです。
仮に、経済学部から1000人、文学部から100人が商社を受けたとします。企業側が学部を一切見ずにフラットに「上位10%」を採用したとしても、結果として受かるのは経済学部100人、文学部10人になります。
世間はこの「結果の数字」だけを見て、「やっぱり経済学部に行かないと商社には入れないんだな」と勝手に錯覚しているに過ぎません。こういうのが、統計データのカラクリです。データは抽出の仕方によって、実態と違う姿を示してしまうことがあります。
なぜ経済学部の学生が商社をたくさん受けるのかといえば、授業で経済を学んだからというよりも、「周りの友達や先輩がみんな商社や金融を目指しているから」です。
つまり、そこに就活に関する情報や熱量が飛び交う「環境(コミュニティ)」があるから、結果として応募者が増え、採用される絶対数が増えているだけなのです。
企業側は「経済の専門知識」なんて学生に1ミリも期待していません。
この現実を踏まえると、「就活で有利になりそうだから」「無難そうだから」という計算で、興味もない学部を選ぶことが、いかに無意味であるかがわかるはずです。
むしろ、就職と直結しない文系だからこそ選べる「強烈な一手」があります。
それは、就職とは全く関係のない、自分が純粋に面白いと思える学問(例えば哲学、歴史学、文学など)の学部をあえて選び、大学の4年間でその学問を徹底的に極めてみる、というアプローチです。
「将来の仕事に直結しない学問をやるなんて、遠回りではないか」と心配する大人は多いでしょう。
しかし、社会に出れば、否が応でも実利や利益を追求する日々が何十年も続きます。
だからこそ、損得勘定や「就職のためのコスパ」を完全に度外視し、利益とは無縁の学問に純粋に没頭したという経験は、その人間の思考を深くし、人間としての底を分厚くします。
中途半端に「就活に役立ちそうなこと」をかじって小綺麗にまとまっている学生より、就職に一切関係のない学問にのめり込み、自分の頭で泥臭く考え抜いた学生の方が、結果的に面接官からも「骨のある面白い人間だ」と評価されることは多々あります。
「就職のために大学の学部を選ぶという計算」を引き算してみる。
将来の役に立つかどうかなど一切気にせず、大学時代は精一杯、就職に関係のない学問に打ち込む。
それは決して遠回りなどではなく、大学生にだけ許された、
非常に贅沢で価値のある「大正解」の一つなのだと思います。
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