世の中には、「資格を持っていた方が就職や転職で有利になる」という根強い信仰(神話)があります。
しかし、僕がかつて人材紹介会社でエージェントとして働いていた時の経験から、この「資格信仰」は完全に思い込みの産物だと言えます。
2012年か2013年頃、パソコンのスキルを証明する「MOS(マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト)」という資格が流行っていた時期の、非常に印象的なエピソードがあります。
ある企業が、求人の募集要項に「MOS資格」と記載していました。
求職者側からすれば、募集要項に堂々と資格名が書かれていると「これを持っていないと応募すらできないんだな」と尻込みしてしまうのが普通です。
しかし、僕がその企業の社長に
「社長、ちなみにこれって必須条件なんですか?」
と質問したところ、返ってきたのはこんな言葉でした。
「いや、必須じゃないよ。こういう風に書いておけば、パソコンのスキルが高い人が来るんじゃないかと思ってね。実はその資格の内容、よく知らないんだよね」
その時は、「マジかよー」と思いましたが、これが、採用現場のリアルだったりします。
企業側は必ずしもその資格の専門性を深く理解して求めているわけではなく、
単に「フィルターとして便利そうだから」「なんとなく優秀な人が来そうだから」
というフワッとした理由で募集要項に並べているケースが意外と多かったです。
不動産業界の「宅建(宅地建物取引士)」なども同じです。
確かに法律上、事業所の従業員の5人に1人は宅建を持っていなければならないという規定があります。
しかし、だからといって「入社前に持っていないと絶対に採用されない」というわけではありません。現場のポテンシャルを見込んで採用し、入社後に勉強させて取らせる会社など山ほどあります。
つまり、「資格があるから採用で劇的に有利になる」という魔法は、一部の特殊な独占業務を除いてほぼ存在しないということです。
企業が求めているのは、資格の証明書ではありません。
もっと根本的な思考力や、現場で泥臭く試行錯誤できる人間力の方です。
「就活で有利になりそうだから」という打算的な理由で、何となく資格集めに走る必要は全くありません。
そんな表面的な武装を引き算し、もっと本質的な経験に自分の時間を使うべきだと思います。
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