塾長コラム

「参考書を通読できない」という静かな危機

最近、進学校に通う高校生たちを見ていて、ある「静かな危機」が進行しているのを感じます。

それは、「分厚い参考書やテキストを、まずは最初から最後までバッと通読する」という学習法ができない子が増えているということです。

なぜ、参考書を通読できないのでしょうか?
その根本的な原因は、シンプルに「語彙力(漢字力)」の圧倒的な不足にあります。

漢字は「意味の圧縮ファイル」

文章を読む時、僕たちは無意識に漢字を「意味の塊(アイコン)」として捉えています。

例えば「産業革命」という文字を見れば、パッと一瞬でその背景や意味が頭に浮かびます。

しかし、語彙力や漢字への耐性が低い子は、これを「さん・ぎょう・かく・めい」と頭の中でいちいち音声に変換しながら読んでいます。

これでは、文字を音にするだけで脳のスタミナ(ワーキングメモリ)を使い果たしてしまい、文脈を理解する余裕がなくなります。

結果として、少し長い文章になると息切れしてしまい、誤読を連発したり、「もう読みたくない」と本を閉じてしまったりするんです。

「分かりやすさ」が奪った活字体力

今の世の中は、YouTubeを開けば「神授業」があり、学校でもタブレットで「分かりやすく図解されたスライド」が配られます。

これらは非常に便利ですが、同時に子どもたちから「文字面から自力で意味を立ち上げる」という能動的な読書体験を奪ってしまいました。

動画やスライドは、向こうから情報が流れてくる「受動的な消費」です。

これに慣れきった脳は、自分から能動的に活字を追い、頭の中で情報を整理・構築していく「活字に対する体力」が完全に落ちてしまっているんです。

究極の自立スキルは「自分でテキストを読めること」

参考書を通読できないということは、言い換えれば「誰かが分かりやすく解説してくれないと、新しい知識を身につけられない」ということです。

大人になってから、新しい仕事や資格、社会のルールを学ぶ時、いつも誰かが都合よく「5分でわかる解説動画」を作ってくれるわけではありません。

分厚いマニュアルや専門書を、自分で読み解かなければならない場面は必ず来ます。

「国や会社が守ってくれない時代」において、自分の力で生きていくための大前提。

それは、「テキスト(活字)を自力で読み解き、知識を獲得できる力」です。

アンビシャスでは、あえて分かりやすい動画や過剰な説明を排除し、生徒自身に「不便な紙のテキスト」と格闘させる時間を大切にしています。

語彙力を鍛え、文字への耐性をつけること。

それは単にテストの点を上げるためではなく、
他人に依存せず、自分の力で生き抜くための「基礎体力作り」なんです。

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