塾長コラム

情報が多すぎて、全力を出せない子どもたち|受験で本当に必要な情報は2つだけ

情報が多すぎて、全力を出せない子どもが増えている

最近、気になっていることがあります。

中学生が、妙に「先」を読もうとする。

「三高の倍率、去年より上がりそうですか?」「この内申だと、受かる確率はどのくらいですか?」「もし落ちたら、私立はどこに……」。受験勉強を始める前から、合格率を調べ、不合格のリスクを計算し、併願の保険をかけようとする。

それ自体は悪いことではありません。情報を集めて判断するのは、大人の世界では当たり前のことです。

でも、15歳がそれをやってしまうと、何が起きるのでしょうか?

全力で物事に打ち込めなくなるのです。

先が見えすぎると、人は走れなくなる

ゴールまでの距離が分からないから、全力で走れる。マラソンランナーは42.195キロという距離を知っていますが、途中で何が起きるかは走ってみなければ分からない。だから走り続けられる。

もし、走る前に「25キロ地点で足がつる確率は38%」「30キロで失速する人が67%」という情報を与えられたらどうなるか。25キロ地点が近づくたびに、足がつるかもしれないと怯える。30キロを前にペースを落とす。情報が、走る力を奪ってしまう。

受験も同じです。「この内申では合格率が60%」という情報を手にした瞬間、残りの40%が頭にちらつく。全力で走るべき時期に、不合格の可能性を計算しながら走ることになる。これほど不幸なことはありません。

リスク管理は、失敗した人間にしかできない

誤解しないでほしいのですが、リスク管理そのものを否定しているわけではありません。リスクを見積もり、備える力は大事です。

ただし、それは自分で痛い目に遭った経験があって初めて身につくものです。

テスト前に遊びすぎて赤点を取った。部活を優先しすぎて提出物が間に合わなかった。自分なりに頑張ったつもりが、全然足りなかった。こうした「失敗の実感」があるからこそ、「次はこうしよう」というリスク管理ができるようになる。

ネットで他人の失敗談を読んで、まだ自分が経験していない失敗を「予防」しようとする。一見賢い行動ですが、これでは本当のリスク管理は身につきません。痛みを伴わない情報は、知識にはなっても判断力にはならない。

若いうちから情報でリスクを回避しすぎると、失敗する機会そのものを失います。そして、失敗しないまま大人になった人間は、本当に大事な場面でリスクを見誤ります。

「調べてから決める」が、挑戦を殺している

情報が手に入りすぎる時代です。スマホを開けば、合格体験記も不合格体験記も無限に読める。偏差値、倍率、合格最低点、内申の目安。全部数字で出てくる。

その結果、何が起きているか。

「三高は厳しそうだから、四高にしておこう」。まだ半年以上あるのに、データを見て挑戦を降りる。「北高なら安全圏だから、ここでいい」。本当は上を目指したいのに、確実な道を選ぶ。

もちろん、現実的な判断が必要な場面はあります。でもそれは、全力でやった上での判断であるべきです。やる前から情報で諦めるのと、やり切った上で現実的な選択をするのとでは、意味がまったく違います。

あえて、情報を遮断する勇気

僕は生徒に、受験期にあまり合格率や倍率を気にするなと言っています。

見るべき数字は2つだけ。今の自分の点数と、志望校に必要な点数。そのギャップを、目の前のワークで1つずつ埋めていく。それ以外の情報は、今の段階では邪魔になることの方が多い。

情報を遮断するのは、思考停止ではありません。むしろ逆です。余計な情報を削ぎ落とすことで、目の前のやるべきことに全力を注ぐための「思考の余白」を作る行為です。何に集中すべきかを見極めることこそが、本当の意味での「頭の良さ」だと思っています。この考え方は頭がいい子ほど、実は全部を考えていないにも通じます。

全力で打ち込んだ経験は、結果に関係なく残る

仮に、全力でやって志望校に届かなかったとします。それでも、全力で打ち込んだ経験は一生残ります。

「自分はあのとき、本気でやった」。この実感があるかどうかで、その後の人生が変わります。高校受験は人生で最初の大きな勝負です。ここで全力を出す経験をした人間は、大学受験でも、就職でも、仕事でも、同じように全力を出せる。

逆に、情報を集めてリスクを計算して、安全な道を選んで、無難に通過した受験からは、何も残りません。合格という結果だけが残って、「本気でやった」という実感がない。それは合格であっても、もったいない。

不合格をリアルに想像することで「受かりたい」という気持ちに火をつける話は、リアルに想像してみようにも書きました。情報で予防線を張るのではなく、感情で突っ込んでいく。15歳には、そちらの方がずっと大事です。

保護者の方へ

お子さんが「落ちたらどうしよう」と言ったとき、一緒になって併願の情報を調べ始めていませんか。

気持ちは分かります。親として、子どもが傷つくのを見たくない。保険をかけておきたい。でも、その保険が、お子さんの「全力」を奪っている可能性があります。

まだ半年あります。今の時点で必要なのは、保険ではなく、「大丈夫。まずは目の前のことをやり切ろう」という言葉です。情報は、全力でやり切った後に、必要なだけ集めればいい。

私たちの教室では、余計な情報に振り回されず、目の前の学校ワークをやり切ることだけに集中する環境を作っています。アンビシャスの考え方に、その全体像を書いています。

お子さんの今の学力で志望校にどのくらい届いているかは、志望校判定ツールで確認できます。必要な情報はこれだけで十分です。

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